2025年05月29日
米裁判所、トランプ氏の全方位的な世界的関税に待った…「緊急権限の乱用」
ソン・リュンス
トランプ大統領が世界的な貿易赤字を理由に推し進めてきた全方位的な関税が、米国際貿易裁判所で「違法」との判決を受けた。トランプ氏の経済政策の核心的な柱が、裁判所によって正面から無力化された形だ。
ニューヨーク市マンハッタンにある連邦国際貿易裁判所(US Court of International Trade)は、3人の判事による合議体の判決を通じ、トランプ氏が国際緊急経済権限法(International Emergency Economic Powers Act)を誤って適用し関税を課したと判示した。この訴訟は民主党の州政府と中小企業が共同で提起したものであり、判決によりトランプ政権による世界的な高率関税の大部分が効力を失うことになった。
これに対しトランプ大統領側は即座に控訴しており、事件は最終的に連邦最高裁まで持ち込まれる可能性が高い状況だ。全世界で数兆ドル規模の貿易に影響を与えかねない重大な判例となる可能性がある。
「非常事態」という名分が崩れた
トランプ氏は2018年から「持続的な貿易赤字は国家安全保障に対する異例かつ重大な脅威」だとして、IEEPA条項を根拠に世界各国へ一律に高率関税を課した。特に中国、カナダ、メキシコ製品には、フェンタニル問題を理由とした追加関税も課された。
しかし裁判所は、トランプ氏のこうした判断は大統領権限を超えた乱用だとみなした。特にメキシコ・カナダに対し麻薬密輸などを理由に関税を課した3番目の大統領令は、実際の麻薬密輸とは無関係な広範な製品にまで関税を適用した点で違法だとの判断が下された。
裁判所「この関税が違法なら、すべての州に適用」
司法省は「裁判所は大統領の判断を裁く場ではない」と反発したが、判事団はこれを一蹴した。「本件は一部だけに該当する問題ではない。原告にとって違法な措置は、すべての人にとって違法である」とし、トランプ氏の関税命令全体を無効化した。
保守系法律団体のLiberty Justice Centerは、トランプ氏が「偽の非常事態」を根拠に関税を課したと主張した。「貿易赤字は非常事態でも、異例の脅威でもない。仮にそうだとしても、IEEPAは一律の世界的関税賦課を許可していない」と付け加えた。
民主党が主導する州政府もこれに同調した。ニューヨーク州のキャシー・ホークル知事は「今回の判決は、米国の消費者に不当な税金として作用したトランプ関税に対する正義の実現だ」と述べた。
貿易の混乱と市場への衝撃
トランプ氏が4月2日の大統領令で世界的関税を発表して以来、世界の金融市場は極度の混乱に見舞われた。数兆ドル規模の時価総額が蒸発しては回復するという事態が繰り返され、特に中国との貿易交渉は遅々として進まないか、あるいは覆されることが日常茶飯事であった。
今回の判決により、トランプ関税の一部――例えば鉄鋼、アルミニウム、自動車などに対する「232条」および「301条」に基づく関税――は依然として有効だが、大部分の世界的関税は法的に効力を失うことになった。
政治的波紋は避けられない
トランプ政権は裁判所に対し、「大統領の判断について司法が過度に介入している」と主張したが、裁判所は大統領がIEEPAをそもそも誤って解釈していたため、緊急事態かどうかの判断自体が無意味であると明らかにした。
議会では大統領に報復関税の権限を付与する「相互主義関税法」の立法が試みられているが、トランプ氏の広範な関税政策が招いた副作用により、推進力は弱まっている状態だ。
事件名はV.O.S. Selections v. Trump (25-cv-00066)およびOregon v. Trump (25-cv-00077)であり、今後の控訴審は連邦控訴裁判所を経て最高裁判所へと続く見通しだ。
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