2025年06月05日
米国の物価指標、信頼揺らぐか…統計人員不足で「代入推定」を乱発
ソン・リュンス
米国政府の最新の消費者物価指数(CPI)統計を巡り、一部の経済学者から信頼性に対する疑問の声が上がっている。米労働統計局(BLS)は最近、外部の経済学者に対し、人員不足のため価格調査対象の企業数を減らしていると明らかにした。去る4月に発表されたCPI統計では、過去に比べてはるかに頻繁に「推定値(imputation)」方式が使用された。
統計を歪曲する意図があったわけではないが、こうした品質低下が市場や政策判断に及ぼす波紋は小さくない。米国の物価指標は、連邦政策金利から年金の引き上げ率、民間の賃金契約、インフレ連動国債(TIPS)の利回りに至るまで、多岐にわたる分野に影響を与えるためだ。
BLSは毎月数百人の調査員(enumerator)を全米各地に派遣し、ジーンズの価格から会計サービス料に至るまで、多様な品目の実勢価格を直接調査している。これに基づきCPIが作成される。ところが調査人員が減少したことで、一部の品目では実際の価格ではなく、「類似品目」または「他地域の価格」を根拠に推定する事例が急増した。これを「異種セル代入(different-cell imputation)」と呼ぶ。
インフレ分析会社インフレーション・インサイトのオマイア・シャリフ(Omair Sharif)氏は、「BLSはやむを得ず、精度の低い方法で空白を埋めている」とし、「データに依存して売買を行うトレーダーの間で不安が高まっている」と述べた。
実際、BLSは4月からネブラスカ州リンカーンとユタ州プロボで、6月からはニューヨーク州バッファローでCPI調査を中断した。労働統計局は「全体的な物価指数への影響は大きくないが、一部の品目や地域別データの変動性は大きくなる可能性がある」と説明した。
問題は、この措置が短期的な問題ではないという点だ。BLSは4月以降、新規採用が凍結されており、新たな人員を補充し訓練するまでは調査の縮小が続くとしている。内部メールによると、「特定の都市ではCPI調査対象の店舗と価格収集項目数を一時的に減らした」と明記されている。
このような混乱は、トランプ政権が1月20日付で連邦政府全般に採用凍結措置を下した後に発生した。イーロン・マスク氏が率いるDOGE(政府効率化省)は、人員削減と退職勧奨を通じて数千人の連邦職員を削減した。BLSもその影響を受けたかどうかは不透明だ。
UBSのエコノミスト、アラン・デトマイスター(Alan Detmeister)氏は、「4月のCPI統計では、全体価格推定値の29%が異種セル代入方式で作成されたが、これは過去5年間の最高値の2倍に達する」とし、「この方式がデータの歪曲を招いたかどうかは定かではないが、サンプル数が減れば統計誤差は大きくならざるを得ない」と指摘した。
4月のCPIは前年同月比2.3%の上昇となり、2021年以降で最も低い水準を記録した。しかし、この数値が実態をどれほど正確に反映しているかについて、疑問の声が高まっている。
米国の経済統計は大恐慌時代から体系的に発展し、長年にわたり世界中の中央銀行のベンチマークとしての役割を果たしてきた。ジェローム・パウエルFRB議長も今年初めの政策カンファレンスで、「経済を正確に把握することは極めて重要であり、米国はこの分野で長年リーダーの役割を果たしてきた」と強調している。
しかし最近では、CPI以外にも統計品質に対する懸念が続いている。5月にはBLSが一部の家庭用品や厨房器具など卸売物価(PPI)に関連する数百のデータシリーズの公開を中断し、去る火曜日には失業率の算出に使用される家計調査で誤った加重値が適用された事実も明らかになった。BLSは当該エラーの影響は軽微だと発表したが、不信感は容易には払拭されていない。
専門家らは、「統計品質の悪化は、政府の統計予算削減や専門家諮問委員会の解散など、構造的な問題とも関連している」と警告する。これまで蓄積されてきた警告が現実のものとなっているわけだ。
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