2025年11月06日
ロボットに本気な会社、実はテスラではなくこの企業?
ソン・リュンス
テスラのオプティマス・ロボットは「無限のマネー製造機」?
先日、テスラ(TSLA)は第3四半期の決算発表で、アナリストの予想を大きく下回る売上高と利益率のガイダンスを提示した。米国政府の電気自動車(EV)購入補助金が10月から終了するため、その前に購入しようとする駆け込み需要が逆に作用するというのが表面的な理由だった。最近決算を発表した同業のフォード(F)やGMの場合、ガイダンスで米国内のEV販売シェアを伸ばしながら、同時により高い純利益見通しを提示していることから、筆者は競合他社が身を削る努力でEVとソフトウェアを追い上げている間、テスラはイーロン・マスクCEOの個人的な好みを満たすために突飛なモデル(Cybertruck)を作ったりして、本質的な競争力を疎かにした結果だと信じている。テスラの量販モデルであるモデル3とモデルYは、それぞれ2016年と2020年に初公開されて以来、フルモデルチェンジが行われていない。ギガプレスなど革新的な生産技術を最初に適用して見せた圧倒的なコスト競争力も、同じ金型をほぼ10年使い続けているにもかかわらず、急速に浸食されている。米国では今やテスラ車は商品性において競合他社より遅れを取っているというのが大方の見方であり、安くしてでも売らなければならないが、それも難しい状況だ。ウォール街のアナリストによる2025年通期の純利益予想は、年初のコンセンサスより実に50%も切り下げられた。
それでも決算が公開された翌日、テスラ(TSLA)の株価は一桁台半ばのやや高い上昇率を記録した。売上の大部分を占める車両部門の業績が悪化し続けているが、テスラはもはやEVメーカーではなく、全世界の家庭に一台ずつ普及するAIロボットを開発する会社だからである。マスク氏はアーニングコール(決算説明会)で、過去10年間壊れたレコードのように繰り返してきた「年内リリース予定の」完全自動運転(FSD)サービスが正式に始まれば、テスラ車は毎年減価償却される厄介者ではなく、所有者の代わりにお金を稼いでくれる資産になると改めて表明し、来年第1四半期には人型ロボットである第3世代オプティマス(Optimus)を発売する計画であることを明らかにした。彼は「現在開発中の第3世代オプティマス・ロボットは人間と違って休憩や睡眠を必要としないため、企業の従業員を代替し、絶えずお金を稼いでくれる事実上の『無限のマネー製造機』(infinite money glitch)になるだろう」と主張し、「将来的にはテスラに10兆ドル(約1500兆円)の売上をもたらす可能性もある」と予想した。
十分に合理的な人々にとって、あの主張がどれほど信憑性があるかは、彼の過去の語録を参照するだけでも判断できると思うが、先日テスラのオフィスを訪問したセールスフォース創業者のマーク・ベニオフ(Marc Benioff)氏が公開したオプティマスの動画を以下に添付することで、筆者の判断に代えたいと思う。もちろん、合理的でない人々は以下の動画を見て、またしてもテスラの超越的なAI技術力に感嘆してやまないだろう。
1兆ドルの成果報酬を要求するイーロン・マスクの本音
イーロン・マスク氏は、株主投票にかけられた最大1兆ドル(約150兆円)に達する成果連動型株式報酬パッケージを自身に支給する案件に賛成してほしいと訴え、全体の議決権の25%に達する持分を確保できなければ、あれほど超越的(?)な性能のAIロボットをテスラ内で開発することにおいて、非常に大きな抵抗感を感じるだろうと強調した。25%である理由は、自身にその程度の持分比率があってこそ、不道徳な集団による一歩間違えれば人類を滅亡させかねないAI・ロボット技術力を持つテスラを敵対的に買収しようとする試みを阻止できる水準であると同時に、マスク氏が完全に狂ってしまった場合でも、残りの株主が自分を追い出すことができるポイントだというのだ。
もちろん、テスラの主要株主たち(ノルウェー政府年金基金など)は、このような深い意図を汲み取れず、報酬パッケージに対して公に反対の意思を表明した。賛成した場合、マスク氏の持分比率が上がる分、他の株主の持分比率(持分価値)が希薄化するためだ。米国の証券取引所は、他の株主の権利を侵害する議決権が強化された新株発行を禁止しているため、マスク氏の全体議決権比重を現在の15%から25%に引き上げるには、普通株を12%ほど追加発行しなければならない。
ある人は、イーロン・マスクがあえてテスラ内部でAIロボット軍団を開発する必要はないと考え、会社分割(スピンオフ)をすればよいと主張する。一見すると、これが最も合理的な方法だ。どうせEVの売上が大部分であるテスラはEVを作る会社として残し、マスク氏が心配するAIロボット部門を独立した新設法人として切り離すのだ。ある分析によれば、テスラの時価総額の半分以上はAIロボット部門が占めているというので、マスク氏の既存のテスラ(EVだけを作る)法人の持分を放棄する代わりに、新設AIロボット法人の持分を増やしてやればよい。そうなれば25%、あるいはそれ以上の持分比率も十分に達成可能であり、テスラは新しいCEOを迎え入れてEVに再び没頭することができる。
しかし、そうなることはない。ロボット開発部門はテスラの既存事業(EV)から出るキャッシュフローが必要であり、自動車「だけ」をやっている競合他社より25倍以上高いマルチプルを誇るテスラの株価(PER 323倍 vs GM PER 13倍)プレミアムを維持させるには、あのAIロボット軍団を開発する部門が必要だからだ。学生時代の「マニト(秘密の友達)」ゲームのように、互いに見えないように助け合うあの美しい関係をすっきりと規定してしまえば、すべてがあまりにも明確になってしまうからだ。
Amazon:従業員60万人をロボットで代替する「隠れたがる」強者
ロボットに非常に本気な企業は、2024年末時点で160万人を超える従業員を抱えるAmazonだ。上記の記事タイトルは、まるでAmazonが明日からすぐに60万人をロボットに置き換えるかのように書いているが、具体的には2033年までに内部見通し通りeコマース事業が成長するために「さらに採用すべきだった従業員を雇わなくても済む」という内容だ。筆者にAmazonがロボットに真剣であることを教えてくれたのは、まさにニューヨーク・タイムズの記者たちがその内容を会社の内部戦略文書から入手した点にあった。Amazonの最高幹部らは取締役会への報告で、2033年までに今より2倍多くの商品を販売しながらも、ロボットを活用した自動化を通じて従業員数を増やす必要がないだろうと見通した。残り少ない2027年末基準では16万人であり、すでに従業員数を増やさずに事業を拡大中だ。Amazonのロボティクスチームは、究極的に物流および運営作業の75%を自動化するという目標を持っているという。
役員たちは従業員をロボットで代替することにどれほど自信があるのか、自社の物流センターが位置する地域で「善良な企業市民」(good corporate citizen)として認識されるよう、地域行事や低所得層の子供たちを対象とした寄付活動により積極的に参加する案を検討中だ。会社の自動化が目標通り実行される場合、センターごとの雇用人数は減るため、地域社会の反発を考慮したものだ。流出した文書には、Amazonが対外的に「自動化」や「AI」という単語の使用を自粛し、「先端技術」という単語に置き換えること、「ロボット」の代わりに人と一緒に働くという印象を与える「コボット(cobot)」という造語を使用することを検討する内容まで含まれていた。すでに自動化に相当な進展がなければ考えにくいことだ。
Amazonの対外広報担当者ケリー・ナンテル(Kelly Nantel)氏は声明を通じて「流出した文書は確定したものではなく、会社役員全体の観点を代弁するものではない」とし、11月の連休期間に合わせて25万人を新規採用する計画を持っていることを明らかにした。
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