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2025年06月14日

戦争に直面した投資家のためのサバイバルガイド

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ソン・リュンス

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イスラエル・イラン戦争勃発

ネタニヤフ首相、30年の時を経てイラン攻撃の引き金を引く
ベンヤミン・ネタニヤフ首相は30年にわたり、イスラエルの存立に対する中心的な脅威はイランの核開発計画であると主張してきた。その間、少なくとも2回、彼は攻撃実行の寸前まで迫ったことがある。
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Bloomberg - Ethan Bronner

イスラエルが突如としてイランへの攻撃を敢行し(ブルームバーグによれば昨年11月から準備されていた作戦)、イランが即座に反撃に出たことで、イスラエル・イラン戦争が勃発した。戦争は始まったばかりであり、情勢がどのように展開するかを予測するのは極めて困難な状況だ。

しかし初期の報道によれば、今回の作戦はこれまでのところ成功的であるとの評価がイスラエル現地メディアから出ている。イスラエルはイランの核科学者や軍高官12名を殺害し、主要な核施設に深刻な損害を与え、イランの報復能力も制約したと主張している。金曜日の夜、イスラエルは今回、イスファハンにある別の核施設を打撃したと発表した。

イスラエルのネタニヤフ首相は1990年代後半から、イスラエルに対する脅威の中でイランに匹敵するものはないと主張してきた。イランはユダヤ国家であるイスラエルを正統性のない存在として否定し、ウラン濃縮や弾道ミサイル開発を進める一方で、中東全域で反イスラエル勢力を武装させてきた。

彼は2010年と2012年の首相在任時にもイランの核プログラムを標的とした軍事攻撃を断行しようとしたが、2回とも土壇場で保留した。彼の安全保障担当者や主要閣僚、そして当時の米国大統領バラク・オバマが反対したためだ。しかし今日、彼の側近や主要閣僚は皆、全面的に支持している状況だ。トランプ氏は対外的にはイランとの交渉を支持すると述べているが、イスラエルの突然の攻撃は彼の承認なしには行われなかっただろう。

イスラエルの軍事力では米国の支援なしにイランの核施設を完全に排除する余力がないため、ネタニヤフ首相は今回の作戦がイランの核兵器開発を不可能にするというよりは遅らせることに近く、完全に阻止するためにはトランプ氏が前向きに米国の軍事介入を指示するか、完全な交渉が成立しなければならないと主張している。

パニックは禁物

地政学的危機において投資家が真っ先に銘記すべきルールは、パニックに陥らないことだ。データが明確に示すように、1ヶ月以上保有する投資の観点から見れば、大半の地政学的イベントは株式市場の収益率にほとんど影響を与えない。

もう一度叫んでみよう。「パニック禁止!」

そして、性急に株式を売却しようとする衝動を抑えることだ。平均的に見れば、地政学的危機の局面で正しい対応は売りではなく、急落したリスク資産を買いに向かうことである。

危機が発生すると、投資家は今起きた出来事を過去・未来にわたって過度に拡大解釈し、「衝突がすぐに世界大戦へと発展する」ようなシナリオを連想する。この時、テレビや新聞に登場する「地政学の専門家」たちは、第三次世界大戦や1970年代式のオイルショック、スタグフレーションなどを予言し、恐怖を煽る。

しかし、こうした「世の終わりのような」警告は、大抵の場合、危機が手のつけられないほど拡大するという仮定の上に成り立っている。歴史的に見て、そのようなケースは極めて稀だ。過去150年の間に戦争が制御不能な段階へと突き進んだ事例は、第一次・第二次世界大戦のたった2回だけだった。

一方、「第三次世界大戦に発展する可能性もあった」と思われる局地戦や対立は数え切れないほどあった。朝鮮戦争・ベトナム戦争、キューバ危機、数多くの中東戦争、核武装した北朝鮮と周辺国の緊張、2011年のアラブの春の過程での内戦など…。しかし、そのほとんどは制御可能だった。理由は単純だ。人々は平和を望み、戦争を避けようと最善を尽くすからだ。戦争が拡大するには、双方が途方もない誤判断をしなければならない。一人の「狂った独裁者」だけでは不十分だ。二人が必要か、あるいは一人の独裁者に相手方の「宥和(appeasement)」が重なる必要がある。

地政学的危機対応4段階チェックリスト

深呼吸をして脈拍と血圧を落ち着かせたら(パニックにならないこと)、次は状況を分析し、行動に移す番だ。

質問1

投資対象国のインフラ(港湾・鉄道・通信網など)が破壊されたか?

  • いいえ → 次の質問へ。
  • はい → 現地経済への大きな打撃が予想される。GDPや企業利益の成長率が鈍化する可能性がある。インフラを運営する企業の株価は急落後、回復に長い時間を要するだろう。保険・再保険会社は大規模な損害賠償負担(不可抗力宣言ができない場合)を抱えることになる。逆に、インフラ復旧・建設関連企業(建設、通信、ITハードウェアなど)には機会が開かれる。ディフェンシブセクター(ヘルスケア・生活必需品など)へ比重を移し、景気減速に備えるべきだ。

質問2

1年以上持続するようなインフレショックがあるか?
(例:世界的な石油・ガス供給の支障、戦争資金調達のための大規模な政府支出など)

  • いいえ → 次の質問へ。
  • はい → インフレ恩恵銘柄に集中せよ。

DCF分析を行う際、物価上昇率の仮定は高く、利益成長率の仮定は低く設定する必要がある。また、一般的に株式は「実物資産」であるためインフレヘッジ手段と言われるが、物価上昇率が4%を超えると、企業はコスト上昇分を消費者に十分に転嫁できず、利益率が圧迫される。

質問3

実質金利に1年以上影響を与える変数があるか?
(例:中央銀行による急激な利上げ・利下げ、政府の金融抑圧政策など)

  • いいえ → 次の質問へ。
  • はい → 資本コストの恒常的な上昇+需要鈍化の組み合わせだ。広範な弱気相場(ベアマーケット)を覚悟しなければならない。

DCF分析の際、実質金利は上方修正、利益成長率は下方修正するのが望ましい。

質問4

上記の3つの質問すべてに「いいえ」と答えたか?

  • いいえ → 上に戻って再点検。
  • はい今がチャンスだ。リスク資産を買い入れろ!
    今回の地政学的ショックがインフレ・実質金利・企業利益に恒久的な影響を与えないのであれば、現在の下落は単なるリスクプレミアムの急騰(投資家の恐怖)に過ぎない。こうした恐怖局面は数日から数週間程度で収まる。株価急落が続く間に、最大限の買い余力を確保せよ。

最善の対応=下落時の買い

研究結果が示している。「地政学ショック→株価急落」という公式が現れたなら、基本的な対応は「買い」だ。

持続的なインフレや実質金利の上昇、長期にわたる利益減少といった「恒久的な影響」が確認された時にのみ、一部売却を議論し得る。それ以外の短期的な業績見通しの引き下げ(1~2四半期程度)は、単なるノイズに過ぎない。

「市場は短期的には投票機だが、長期的には天秤である。」
— ベンジャミン・グレアム

群衆が手を引いて投票する時、優れた投資家は天秤で価値を量り、行動を起こす。


注釈

  1. 参照:https://rpc.cfainstitute.org/en/research/foundation/2021/geo-economics
  2. 「地政学の専門家」の多くは国際関係学や政治学が専門であり、金融市場の経験は皆無に等しい。一方、経済学者の中には、危機のたびに地政学の専門家を自称しながら、実際には地政学や金融市場に対する実証研究や資金運用の経験を持たない「地政学の観光客(geopolitics tourists)」が多い。道案内を観光客に任せる人はいないはずだ。
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