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2022年09月28日

FRBが利上げを続ける理由

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ソン・リュンス

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2019年から米国株式投資家の間で流行している言葉がある。それは「パウエル・プット」という用語だ。

プット・オプション(Put Option)とは、将来の特定の時点において、あらかじめ合意した価格で株式を売却できる権利を意味する。市場が下落するたびにジェローム・パウエルFRB議長が介入し、利下げやQE(量的緩和)を断行して株価を押し上げる現象を風刺した用語である。

最近、ナスダック、ダウ平均株価、S&P500のいずれも下落傾向が連日続いており、市場参加者の間ではそろそろこの「パウエル・プット」に対する期待感、あるいは切迫感(?)が取り沙汰されているようだ。しかし、株式市場の行方は連邦準備銀行(FRB)の考慮対象ではないという点を明確にしておきたい。

では、FRBが重要視している指標とは何だろうか?

それはまさに市中の流動性、言い換えれば銀行に十分な現金があるかどうかだ。

銀行に現金が十分にあるかどうかは、どうすれば分かるのだろうか?

受信金利(顧客が銀行に現金を預ける際の金利)を見ればよい。筆者が利用しているバンク・オブ・アメリカのチェッキング・アカウント(当座預金口座)は、現在0%の金利を誇っている。もし銀行に現金が不足しているなら、受信金利を上げてより多くの預金を誘導するはずだが、預金金利が0%という状況は、銀行が今のところ資金調達に問題を抱えていないことを意味する。実際、米国の銀行はあまりにも多い預金のために頭を抱えていたりもするが、それはまた別の機会に扱うことにしよう。

もう少し専門的な話をすると、リバースレポ(Reverse Repo / Repurchase Agreements)市場を見ればよい。日本語でリバースレポ、あるいは売り現先と呼ばれるこの市場は、簡単に言えば、バンク・オブ・アメリカやチェースのような商業銀行が保有している超過準備金(excess reserves)を、一晩の間FRBに貸し出す市場のことだ。

超過準備金とは何かと問われれば、簡潔には「銀行が必要とはしていないが、勝手には使えないお金」と考えればよい。専門的には、銀行が必須で積み立てなければならない支払準備金(米国の場合、預金の10%)以上の準備金を意味する。

(ブルームバーグ端末)
(ブルームバーグ端末)

ところで、このチャートを見てほしい(白い線)。

超過準備金が2.3兆ドル(約340兆円)に達している!

米国の銀行が積み上げてはいるものの使い道のない資金が、行き場を失ってリバースレポ市場に流れ込んでおり、さらにその額は増え続けているのだ。

この現象には、超短期米国債の供給が減少した影響もあるが、究極的には市場の流動性が十分であることを裏付けている。

したがって、銀行システム(Banking System)において信用収縮が起こる余地は全くないと言え、これは金利を継続して引き上げる余地が残っていることを意味する。

ロイター通信の5月の記事でインタビューに応じたLou Crandall氏(マネーマーケットリサーチ会社Wrightsonのチーフエコノミスト)によると、昨年の冬、FRBのタカ派は「膨れ上がったRRP(リバースレポ)残高を、FRBが量的引き締めを行うべき理由として挙げた」とし、夏の間RRP残高が2兆ドル以上に膨らめば、予定より早い量的引き締めの根拠として使用される可能性があるとの意見を示唆していた。夏が過ぎた現在、RRP残高は2兆ドルをはるかに超えている状況だ。

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