2022年12月13日
下落し続けるテスラの株価、その理由とは
ソン・リュンス
電気自動車(EV)、特にテスラ(TSLA)は、「走るiPhone」という異名を持つほど、「自動車」というよりは「高級電子機器」に近いイメージを持たれています。
しかし今年に入り、テスラ(TSLA)の株価は低迷しています。最近では、市場平均をアンダーパフォームする傾向がますます強まっています。
問題は大きく2つに分けられます。
- 中国国内の需要問題
- CEOによるTwitter買収
まず、中国における需要の問題について取り上げてみましょう。
中国は自国内での電気自動車の生産および販売に対し、非常に積極的に補助金を支給している国の一つです。Nio、Xpeng、BYDなどのローカルブランドが台頭し、ハイエンドからローエンドに至るまで、世界の電気自動車市場における最大の激戦地となっています。
ところが最近、テスラが中国で在庫車両に対して独自の補助金を支給しているという噂が広まり(実際に確認されました)、第一に投資家の心理を冷え込ませました。その後、ブルームバーグやロイター通信が上海工場の生産量を縮小するというニュースを報じたことで、需要に対する懸念はさらに拡大しました。
テスラ側は生産縮小は「誤報」だという立場をとっていますが、ブルームバーグはシフト時間の短縮など詳細な内情まで報じており、実質的な減産は事実であると見られています。
需要の問題は、テスラにとってこれまで存在しなかった、事実上想像さえできなかった問題です。常に需要が供給を上回っていたため、これまでテスラの最大の問題は適正量の車両を生産することにありました。ここ2年間の新車供給不足および高級車への需要増加は、高価格帯の電気自動車を販売するブランドであるテスラにとって追い風として作用していたのが事実です。
問題は、来年から中国政府の電気自動車購入補助金が削減されるため、今年の需要でさえも将来の需要を先食いしている感が否めないという点です。このような状況下で、世界最大の自動車市場において需要の問題が発生することは、テスラの株価にとってプラスになるはずがありません。
テスラのEPS(1株当たり純利益)は、来年には今年比で41%増加すると予想されていますが、テスラが需要の問題を克服し、現在のような高い利益率を維持しながら、はるかに多くの車両を販売できるかについては疑問の余地があります。
興味深いのは、これまで自動車会社としての扱いを受けてこなかったテスラが、今年に入り唐突に他の自動車メーカーと比較されるようになった点です。これには「需要」という変数が最も大きな役割を果たしていると考えられます。
テスラのFWD(予想)PERは32倍で、来年度の利益見通しが楽観的であることを考慮しても、歴史的に見て最も低い水準に近づいています。ある種の「バリュー株」になってしまったわけです。
ここには様々な懸念が反映されていると言えます。
テスラのCEOであるイーロン・マスク氏は、Twitterを買収する際、買収資金を調達するためにテスラ株を担保にしました。近い将来にTwitterを黒字転換できなければ、彼が保有するテスラ株のかなりの量を処分しなければならなくなる可能性もあります。
イーロン・マスク氏がTwitterのCEO役を担い、先頭に立って会社の構造改革に乗り出したことに伴うもう一つの懸念は、彼がテスラに対して以前ほど多くの関心を注げなくなるのではないかという点にあります。
彼にはテスラやTwitter以外にも、SpaceX、Neuralinkなど多数の企業のCEOとしての役割があることを忘れてはなりません。
もし電気自動車が本当に「タイヤのついたスマートフォン」であるならば、テスラはApple(AAPL)と直接比較されることになるでしょう。
iPhoneが発売され、出荷量の伸びが停滞すると、投資家はAppleの利益率が他のスマートフォンメーカーと同様に低下して落ち着くと予想し、高いバリュエーションを付与しなかった。
しかしAppleは、超高価格帯のプレミアムスマートフォンセグメントを新たに開拓し、周辺機器やアクセサリー、ソフトウェア、コンテンツのサブスクリプションを武器に、一貫して高い成長率と利益率を維持した。これが、より高いバリュエーションにつながった。
テスラも決算発表のたびに自社をAppleと比較し、自動運転時代に突入するにつれて、Appleのように自社エコシステムを基盤とした高収益ビジネスを着実に拡大できると主張している。果たしてテスラがその主張を実現できるのか、注視する必要があるだろう。
もしテスラの主張が現実のものとなり、毎年50%近い成長率を「維持」できるなら、現在の株価は明らかに過小評価されているからだ。
3行まとめ:
- 電気自動車(EV)は従来の自動車というより「タイヤのついたスマートフォン」
- テスラの中国における需要問題は、今年より来年の方が深刻化する可能性が高い
- Appleのように自社エコシステムを構築できるか、見守る必要がある
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