2025年11月21日
AIリスクの象徴となってしまったオラクル
ソン・リュンス
バブルに突入したAI(GPU)投資サイクル
去る9月、オラクルが第2四半期の決算発表でRPOが前年同期比359%急増したことを公示し、今後のGPUクラウド事業部の成長性に対する期待から最高43%まで急騰したオラクル(ORCL)の株価は、最近ウォール街でAIバブルに対する懸念が急速に広がり、決算発表以前の上昇分をすべて返上し、むしろその下まで下落した。
9月17日に発行したリサーチ記事で、筆者は増加したRPO(残存履行義務)の大部分がChatGPTモデルの開発元であるOpenAIから発生していることを確認し、今年の売上が130億ドルであると推定されるOpenAIがオラクルと5年間で年600億ドル規模のクラウドコンピューティング契約を締結したことは、少なくとも再来年まで年間売上が5倍以上増加することを前提としていると指摘した。
上記の文章で筆者は、クラウド主要3社(ハイパースケーラー)であるAmazon、Microsoft、Alphabet(Google)とは異なるオラクルの設備投資費調達戦略について、次のように記述した:
オラクルはAI設備投資において、主要3社とは異なる非常に攻撃的なアプローチをとっている。データベースおよびERPシステムなどを提供するソフトウェア企業であったオラクルの設備投資費項目は、2025会計年度第1四半期の78億ドルからわずか1年で274億ドルへと4倍に急増した。これにより、112億ドルに達していた四半期フリーキャッシュフローは-58億ドルの流出に転じ、約定された契約を履行するために今後の設備投資費は現在の水準から数倍は増加するだろう。オラクルの四半期末の現金性資産は100億ドルをわずかに上回る程度であり、近いうちに社債市場を積極的にタッピングする可能性が高いことを示唆している。
「財務エンジニアリング」の神様が来たとしても、キャッシュフローがマイナスの企業が財務活動(株式や債券などの発行による現金確保)なしに営業を継続することは不可能だ。オラクルの現金性資産は、OpenAIとの契約を履行するための設備投資費を賄うには到底足りず、大規模な資金調達が必要となり、数日後の9月末に180億ドル規模の社債を新規発行した。
オラクルの企業規模において180億ドルの社債発行は驚くべき水準ではなく、決算発表直後でさえ大きな変動がなかったオラクルの社債のCDSプレミアム(債務者が償還不履行となった場合に支払いを代行する条件で受け取る一種の保険料)は、米国の投資適格社債指数を下回る安定した水準を維持していたが、3倍以上に急騰するという動きを見せた。100ベーシスポイント(bp)は1%であるため、もしオラクルの社債に100億を投資した投資家が投資金全額に対する支払い代行を望む場合、支払わなければならないプレミアムはなんと1億にもなる計算だ。
マイクロソフト、OpenAIに「敵との同衾」を許す
OpenAIの筆頭株主は初期から天文学的な金額を投資したマイクロソフトであり、投資金の大部分はGPUクラウドクレジットとして支払われた。マイクロソフトの投資条件の一つとして、自社クラウドサービスであるAzure以外のサービスの使用を禁止する条項もあったが、サム・アルトマンが継続的にGPUコンピューティングリソースの不足を訴えたため、条項緩和を通じてオラクルやGoogleなど他のクラウドプロバイダーとの契約も許可した。
マイクロソフトが将来のクラウド売上を競合他社に事実上譲渡するということは、成長性の観点からは理解しがたい決定だが、GPUデータセンター建設にかかる天文学的な資金が蒸発するリスクへの考慮が含まれていることがわかる。
バブルリスクのヘッジ手段として生まれ変わったオラクル
オラクルはデータベースおよびERPソフトウェアなど安定した事業部を保有しているため、真剣に会社がすぐに潰れると考える人はほとんどいないだろう。ただし、現時点で最も攻撃的にAIデータセンターに投資している企業はオラクルであるため、バブルを懸念する投資家たちはオラクルの株式と社債に逆張り(ショート)することで、AIリスクに対するヘッジ手段として利用しているのである。
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