2023年10月03日
住宅ローン金利はどれほど重要なのか?
ソン・リュンス
住宅ローン金利が7%台を超え、8%台に定着するという見通しが浮上している。現在、30年固定住宅ローン金利は7%台前半で、過去10年間で最も高い水準を「維持」している。「金利がこれほど高いのだから、住宅価格が下落するのは既定路線ではないか?」と考えるのは当然かもしれないが、現実はそれよりも複雑だ。住宅市場が崩壊するには、金利という要素だけでは不十分なのである。
2つのキーワードは「所得」と「供給」である。まずは所得について見ていこう。
所得
2021年から2023年初頭にかけて、インフレ率(黒色)は所得増加率(青色)を上回る上昇率を示した。人々の実質所得は減少していた(所得増加率-インフレ率)ということだ。しかし、最近になってインフレは多少落ち着きを見せており、実質所得は再び増加し始めている。
住宅価格は様々な変数の関数であるが(その関数が何であるかは誰にも分からず、おそらく現時点に適合する関数を見つけたとしても、見つけた瞬間からその関数は正確性を失うだろう。ジェーン・ストリート(Jane Street)が愚かだからといって、あれほどの大金を払って名門大学の数学や統計学の専攻者を採用しているわけではない。AIでアルファを絶えず出し続けられると主張する韓国のあるスタートアップを見ると驚くばかりだ。奇跡を起こしたのだから)、その変数の中で歴史的に最も重要だと感じられる変数は所得である。
所得とは結局のところ、家賃や住宅ローンの返済金を支払うための手段であり、賃貸であれ所有であれ、通常は所得の3分の1程度を住宅に投資するため(あるいはその程度が適切だと考えられているため)、所得が最も大きな変数を占めると仮定することに無理はないだろう。そのような所得が、上昇率こそ鈍化しているものの持続的に増えているという点で、住宅市場のいわゆる「ファンダメンタルズ」には大きな問題がないということだ。
供給
2つ目に供給を見ると、圧倒的に不足している状況としか言いようがない。
供給不足の原因は、2007年まで続いた米国の住宅バブルとその崩壊にある。住宅景気が過熱する中で、人が住みもしない家が供給され続け、所得さえない人々が借金をして住宅を購入した。
そうして形成されたバブルは、金利が上昇すると2年以内に弾け、住宅景気は急速に冷え込んだ。問題は、住宅景気が冷え込むにつれて多くの住宅開発業者が倒産し、家を建てる企業が不足してしまったことだ。
2022年まで住宅供給は着実に改善されてきたことがグラフから見て取れるが、米国住宅協会は依然として数百万戸の住宅が不足していると推計している。ここで需要に対して供給が最も不足している住宅は、「シングルファミリー(Single Family)」タイプに該当する戸建て住宅だ。
このように所得(demand lever)と供給(supply lever)が住宅価格の上昇に友好的な環境を醸成したとき(薪を用意したとき)、火をつけたのはまさに、歴史的な低金利、量的緩和、そして政府主導の現金給付型福祉政策というオーケストラであった。
上記のチャートを見ると、パンデミック前には32万ドル程度で取引されていた米国住宅の取引価格中央値は、ピーク時には48万ドルへとわずか2年で60%近く上昇しました。5%を超えて上昇した政策金利は、これを1年で42万ドル水準まで引き下げることには成功しましたが(12%超の下落)、パンデミック前の価格帯よりは依然として遥かに高い値を示しています。
住宅価格の見通し
最も気になるのは、今後どうなるかという点でしょう。結論から言えば、高騰した金利のために大幅な上昇は難しいものの、下落もまた限定的であると予想されます。
まず米国の住宅市場構造を理解する必要があります。本来は20%の頭金(ダウンペイメント)を支払い、残りの80%を借り入れて30年間で返済する住宅ローン制度が米国の「定石」でしたが、現金の余力が増した人々がより多くの頭金を支払うようになり、「ホームオーナーズ・エクイティ(住宅保有者の持分)」はむしろ上昇し続けています。
例えば、以前は家を買う際にトイレの部分だけ自己資金で支払い、残りは銀行の資金で買っていたとすれば、最近ではリビングルーム程度は自己資金で支払い、残りを銀行の資金で買っているようなものです。
また、2008年の金融危機以降、銀行の融資基準が厳格化された点も、価格の下方硬直性の根拠となります。主に信用スコアが高く高所得者である住宅所有者が家を売却せざるを得ない状況は、突然の失職以外には考えにくいからです。こうした住宅所有者が急増すれば、一斉に売り注文が出て住宅価格を下落させる可能性があります。
しかし、今のところ2008〜2009年のような大規模な失業事態が発生する可能性はそれほど高くないと見られます。
ニュースレター
オリジナルコンテンツ、ニュースレター、特別イベントに関する最新情報をいち早くお届けします。