2022年08月15日
「世界経済に冬が来ている」というツイートが示唆する点
ペ・ソンウ
実話に基づく映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転(原題:The Big Short)』の背景にあるのは、2008年の経済危機を招いたサブプライム住宅ローン問題です。
映画の中で主人公は、信用によって危うく積み上げられたこの事態を危険だと判断し、空売り(ショート)で巨額の利益を上げました。
この映画の主人公のモデルとなった人物は、マイケル・バーリ氏です。
サイオン・キャピタルの創設者でもあるマイケル・バーリ氏は、最近の市場に対して警鐘を鳴らしています。
マイケル・バーリ氏が懸念しているのは「返済の瞬間」
マイケル・バーリ氏は、経済に冬が到来しつつあると主張しています。
その主張を裏付ける根拠の核心は一つです。
「純消費者信用残高が過去最高を更新中である」
消費者信用残高が増加しているということは、信用(借入)が多く利用されていることを意味します。
クレジットカードを使えば翌月に返済しなければならないように、
マイケル・バーリ氏は、人々が信用を多用しており、それを返済しなければならない瞬間を懸念しているようです。
上記のデータは、2000年から2022年までの米国の消費者回転信用(リボルビング信用)を示しています。
分割払いや住宅ローンなどが非回転信用であり、クレジットカードや当座貸越小切手などが回転信用にあたります。
犬の名前でも住宅ローンが組めた時代と現在、
人々が利用している回転信用の額が互いに似通った状況にあります。
マイケル・バーリは、この状況について、コロナ禍以降に中央銀行がばら撒いたお金(ヘリコプターマネー)によるものだと説明しています。
お金を使っても余るほど溢れていた時期に身についた消費習慣は中毒性が強く、現在の回転信用残高を形成することになりました。
返せばいいんでしょう、それくらい
クレジットカードを利用してまだ返済していない金額(未決済残高)が増えたところで、返せばいいだけの話です。
どうせ将来稼ぐお金なのですから、すべての負債は返してしまえばそれで終わりではないですか?
しかし、ヘッジファンドの設立者ともあろう人物が、「クレジットカードを使いすぎた」という小言レベルの根拠だけで冬の到来を懸念しているわけではなさそうです。
米国の貯蓄額と貯蓄率が、その両方において底をついているためです。
米国の個人貯蓄額は2014年以降で最低値を記録しており、
2020年の直後に33.8%を記録した米国の貯蓄率は、現在5%余りの水準に留まっています。
その通りです。将来返せばいいのです。
コツコツと貯蓄をしながらクレジットカードを切るのであれば、翌月に利用代金を支払うことができます。
しかし、貯蓄もしないままクレジットカードを切っていては、支払いが困難になります。
消費者信用残高の水準が過去最高レベルに高まっている中で貯蓄率が底をついているということは、
単に消費中毒だから消費しているのではなく、今すぐ信用取引(借金)でもしなければ生活が苦しいためであると解釈することもできます。
信用でその日暮らしをしている人々が、その状況を耐え抜き、再び貯蓄をするためには、十分な額のお金を稼がなければなりません。
彼らがお金を稼ぐためには、会社が成長し、給料を十分に支払ってくれなければなりません。
ちょっと待ってください。成長とは、以前より大きな売上を作るということです。
会社にもっと稼いで成長しろと言えば、おそらく答えは次のようになるでしょう。
お金がないのに、どうやって稼ぐんですか!
お金が出回らない時点で成長するのは非常に困難です。耐えることだけでもしなければなりません。
だからこそ、この「耐えなければならない人々」がうまく持ちこたえることが本当に重要なのです。
ついに今回、CPI上昇率が予想を下回ったおかげで株式市場が大きく上昇したことが説明できます。
金利は上がっており、市場に出回ったお金は消えつつあるのに、貯蓄率は低く、信用の利用度は高い状態です。
これを総合すると、マイケル・バーリのツイートは次のように解釈できます。
まだ支払いをしながら持ちこたえてはいるが、支払いができずに崩壊する瞬間に訪れるであろう景気後退が懸念される
冬が来た(Winter has come)ではなく、冬が来ている(Winter is coming)と表現した理由です。
AWAREの購読者の皆様に提供できる考えるべき点は一つです。
消費者はクレジットカードを使わずに、現在の状況を耐え抜くことができるでしょうか?
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