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2023年02月21日

経済動向に対する新たなシナリオ、そしてスロック氏の懸念

ペ・ソンウ

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過度な量的緩和の上に急激な引き締め政策が重なり、景気後退につながるというハードランディング(硬着陸)

そして、堅調な労働市場を基盤に、インフレが正常化するまで金利水準に耐えうるというソフトランディング(軟着陸)

これら2つのシナリオについて意見が対立する中、新たな可能性が急浮上し、注目を集めています。

ノーランディング(無着陸)です。

ノーランディングとは?

「我々の見解では、『ノーランディング』とは、ソフトランディングかハードランディングのどちらかが起こるのを待っている状態に過ぎない」

- エレン・ゼントナー(モルガン・スタンレー チーフ米国エコノミスト)

アポロのチーフエコノミストであるエレン・ゼントナー氏は、ノーランディングを次のように表現しています:

「ソフトランディング、あるいはハードランディングが起こるのを待っている状態」

つまり、引き締め策にもかかわらず経済は後退していないものの、インフレも鈍化していないため、引き締め基調が継続することを意味します。

以前執筆した「予想を上回ったCPI、そしてダラス連銀が見る状況」では、ローリー・ローガン総裁が「インフレは持続するだろうし、金融政策で抑制する必要がある」と主張する様子が見られましたし、

さらに以前執筆した「[金利] ブラード総裁が2023年を肯定的に見ている理由」でも、ブラード総裁は現在の労働市場は非常に強く、ソフトランディングに適した状況になっているものの、インフレが低下するには長い時間が必要だと主張する姿勢を示していました。

FRB(連邦準備制度理事会)総裁たちの最大の関心事は、利上げのスピードにあるという雰囲気です。

インフレ率は依然として高水準で推移しているためです。

足元の経済指標は堅調であり、パウエル議長は引き締め基調を維持する公算が高く、インフレが急速に鎮静化するとは考えにくい状況にあります。

これこそが、「ノーランディング(無着陸)」シナリオが浮上した背景です。

経済は堅調さを保ち、インフレと金融引き締めが長期化するノーランディング。

概念だけを見れば、さほど大きな問題ではないように思えるかもしれません。単に現状が継続することを意味するからです。

しかし、アポロ・グローバル・マネジメントのチーフエコノミスト、トルステン・スロック(Torsten Slok)氏は、このノーランディングが株式市場にとって悪材料になると主張しています。

ノーランディング・シナリオそのものがリスク

「リスクは『ノーランディング』シナリオにあります。これは、FRBが市場参加者や当局者の現在の予想よりも政策金利を高く引き上げることを余儀なくされるため、米国株式およびクレジット市場にとってさらなる下落要因となるでしょう」

- トルステン・スロック(アポロ・グローバル・マネジメント)

スロック氏は2月10日、MarketWatchとのインタビューにおいて、

現状はFRBに対し、市場予想よりもさらに厳しい利上げを強いることになるため、ノーランディング・シナリオそのものがリスクであると説明しました。

改めて現状を整理すると、以下のようになります。

1. インフレ率は依然として高水準

2. 労働市場は堅調

3. 株価は大幅に反発

トルステン・スロック(Torsten Slok)氏は、最近の株価反発の理由を景気減速の明確な兆候が見られないためだと説明しました。

月次の新規雇用者数は徐々に減少傾向にあり、インフレ率も低下しています。パウエル議長がインフレの鈍化を認めるための条件が整いつつあるようです。

景気減速の兆候はなく、これを見た「昨年敗北した投資家たち」、つまり昨年の金融市場のラリーにおいて株式の保有比率が低かった投資家たちが、こぞって株を買い求めたという説明です。

アポロ・グローバル・マネジメント(Apollo Global Management Inc.)チーフエコノミスト、トルステン・スロック氏(CNN)
アポロ・グローバル・マネジメント(Apollo Global Management Inc.)チーフエコノミスト、トルステン・スロック氏(CNN)

トルステン・スロック氏の懸念 #1

そして、この現象を主導した主な要因は労働市場でした。

予想をはるかに上回る51万7,000人の雇用が追加され、失業率は1969年以来の最低水準である3.4%に低下し、週間失業保険申請件数も低い水準にあります。

堅調な労働市場に加え、サービス部門の強さが問題となっています。

スロック氏は、自動車や耐久財のように金利に敏感な経済部門の活動は鈍化しているものの、米国経済の80%を占めるサービス部門は依然として堅調であるとし、

サービス部門が数十万もの雇用を埋めなければならないとすれば、賃金上昇はインフレを根強いものにする脅威となると説明しました。

トルステン・スロック氏の懸念 #2

住宅に対する懸念もありました。

住宅価格は大幅に下落し、インフレを押し下げる動きを見せていました。

しかし、スロック氏は、もはやそうではない可能性があると述べています。

住宅ローン金利は大幅に上昇したものの、最近ピークを過ぎたという点、そして不動産業者が春の販売シーズンを前に住宅購入希望者の客足が増加し始めたと報告している点を根拠に、

住宅市場の低迷が緩和される兆しを見せていると述べました。

これは、インフレに対する住宅市場の影響が消滅する可能性があることを意味します。

トーステン・スロックの懸念 #3

中国の経済再開に伴うコモディティ価格の上昇圧力です。

この点は以前、ブラード総裁が「金利をあらかじめ引き上げておくべきだ」と主張した際に挙げた根拠と同様です。

これら3点を根拠に、スロック氏は市場予想よりもFRBが急激に利上げを行わなければならない状況が生じる可能性があると警告しました。

インフレの鎮静化を待つ「ノーランディング」シナリオが長引けば長引くほど、懸念すべき問題が噴出し、FRBが反応せざるを得ない状況になる可能性があるためです。

市場予想よりも急激に金利を引き上げる状況は、市場に変動をもたらします。これは、株式と債券の双方が取引しにくい状況が訪れる可能性があることを意味します。

3行まとめ:

1. ハードランディングやソフトランディングを待つ「ノーランディング」シナリオが急浮上し始めた

2. アポロのトーステン・スロック氏は、このシナリオが続くほど、FRBに「予想以上に引き締め的な」利上げを強いることになると主張

3. 市場予想よりも急激に金利が上昇すれば、株式・債券ともに取引が困難になる可能性がある

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