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2024年10月18日

Googleデータセンター、原発が必要…SMR時代到来か?ニュースケールの未来とは

ペ・ソンウ

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「AI技術には、以前考えられていたよりもはるかに多くのエネルギーが必要だ」
- サム・アルトマン

「人工知能(AI)の発展を制約するのは、変圧器と電力供給だ」
- イーロン・マスク

多くの企業がNVIDIAのジェンスン・フアン氏のもとを訪れ、GPUを供給してほしいと懇願しています。今度は電力についても同様のことが起きるのでしょうか。

カイロス・パワーと原発契約を締結したGoogle

14日、アルファベット(Google)がデータセンターとして初となる原発契約を締結したとの報道が出ました。AIの発展が電力需要へとつながった形です。
AIの進化が電力不足問題を引き起こすだろうという見方は、以前から存在していました。

「半導体工場を建設する際は『水』が問題でしたが、データセンターでは今後『電気』を巡る摩擦が生じる可能性があると言われています」
- Syuka World(シュカワールド)

動画では、AI技術の発展がデータセンターの需要につながり、それがすなわち電力需要へと直結すると語られています。

マイクロソフトとOpenAIは共同で1,000億ドル(約15兆円)規模に達するサーバープロジェクトを推進中であり、多くの著名なCEOたちも今後電力が不足するだろうと口を揃えています。米国を含め、多くの送電網インフラがAIの発展速度に追いついていないのが現状です。

しかし、多くの企業は政府や社会に対して再生可能エネルギーに関する約束を交わしています。動画に登場する「RE100」は、炭素排出を削減し、100%再生可能エネルギーへ転換するという公約であり、2023年時点で400社以上の企業が参加しているイニシアチブです。アルファベット(Google)を含め、Apple、マイクロソフト、Metaといったビッグテック企業もこれに加盟しています。
電力は必要であるものの、石炭、天然ガス、石油は使用できないとなれば、彼らが注目し始めた電力生産方法があります。

小型モジュール炉(SMR)

石炭はkWhあたり1.025kg、天然ガスはkWhあたり0.443kgのCO2を排出しますが、
SMRは実際に炭素が排出される廃棄物管理、ウラン採掘、発電所建設などライフサイクル全体を考慮しても、kWhあたり0.015〜0.03kg程度の排出にとどまります。事実上、ゼロに等しい数値です。

安全技術も優れており、建設コストや期間も大型原子力発電所より少なく済みます。さらに大量生産が可能で単位あたりのコストも削減できるため、これはまさにデータセンターにとって「うってつけの存在」と言えるでしょう。

ところで「なぜ今になって契約が締結されたのか?」という疑問が湧きます。
必要だったのであれば、もっと早く動いていたはずだからです。

筆者が導き出した答えはこうです。「知らなかったからだ」

「米国の電力需要に関して、ChatGPTのようなものに必要な電力需要を正確に測定することは非常に困難です。」

—デビッド・グローク(David Groarke)、Indigo Advisory Group マネージング・ディレクター

冒頭でサム・アルトマンが言及したように、AI技術の発展に関する予測は非常に抽象的であり、それに伴う電力需要も正確に予測することはできませんでした。

では、電力とSMR(小型モジュール炉)への需要がいよいよ表面化し始めているのでしょうか?
代表的なSMR企業について調べてみました。


ニュースケール・パワー、ティッカーシンボルからして「SMR」

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ニュースケール・パワー(SMR)は、ティッカーシンボルそのものがSMRです。最近話題のNetflix番組『白と黒のスプーン』に登場する「ビビン大王」ことユ・ビビン氏を彷彿とさせます。

ニュースケール・パワーは、その名の通り(ティッカー通り)の実力を示すかのように、米原子力規制委員会(NRC)から初めて設計認証を受けた企業です。2023年を通じて下落していたニュースケールは、2024年を迎えてターニングポイントを迎えています。その始まりは、2024年初頭に米下院で「原子力発電促進法(Atomic Energy Advancement Act)」が365対36の賛成多数で可決されたことでした。

Canaccord Genuity:「初期資本は必要だが、彼らは既存のエネルギー技術の課題であるコストと安全性の問題を解決する可能性が高く、2026年には収益も創出できそうだが?」

法案通過から間もない2024年1月29日、ニュースケールが前年第4四半期に予想以上の損失を発表したにもかかわらず、投資銀行であるCanaccord Genuityはニュースケールの目標株価を4.25ドルと提示しました。当時の株価は2.98ドルでした。
続いて3月18日、目標株価を4.25ドルから8ドルへと上方修正しました。この日、ニュースケールの株価はさらに28.66%上昇する動きを見せました。

ウェルズ・ファーゴ(Wells Fargo):「ニュースケールのSMRは、他のエネルギー源と比較してコスト競争力がないかもしれない…。ニュースケールの成長可能性はSMRにあるが、もしSMRが不要になったらどうするつもりだ?」

しかし、その翌日の3月19日、別の投資銀行であるウェルズ・ファーゴがこれに待ったをかけます。SMRは他のエネルギー源と比較してコスト面で競争力がないとして、投資判断を「アンダーウェイト(Underweight)」に引き下げたのです。これと同時にSMRの株価は下落しました。本格的な売上が発生する前の段階であるため、アナリストのコメントが大きな影響を与えている様子です。

誰がどのようなコメントを出そうとも、立法手続きは進行していきます。7月中旬までニュースケールの快進撃は続き、誰もが口を揃えてAI時代における資源の必要性について語り合っていました。

NuScale CEOのジョン・レノン・ホプキンス
NuScale CEOのジョン・レノン・ホプキンス

ジョン・ホプキンス:「あ……彼らが苦境に陥っては困るのだが……」

しかし7月、「AI技術は現在、収益を生み出せていないのではないか」、「それに比べて株価は高すぎる水準だ」という疑問と共にテック企業の株価は大きく下落し、AI発展の恩恵を受けていると評価されるニュースケールもまた、この影響から自由ではありませんでした。
AI企業が今後収益を上げられなければコスト削減に注力することになり、その分成長速度も鈍化し、当然ながら電力に費やす資金も減少することになるためです。

幸いなことに、利下げと共に一部の経済指標が肯定的な兆しを見せると市場の懸念は沈静化し、ニュースケールは再びエンジンをかけて走り出しました。


ニュースケール株、収益性はあるか?


アルファベットを筆頭に、多くのビッグテックがSMRという新たな電力供給策に関心を持ち始めれば、AIに流入した巨額の資金は契約金という形で原発市場へと流れ込むことになるでしょう。

しかし、良い面ばかり見ていると、良い面しか見えなくなります。私たちは客観的であるべき投資家です。
もちろん、原発において最も重要なことの一つは政府の承認であり、ニュースケールは50MWeについて承認を受けているため、実用化が計画されている77MWeの承認も2025年までに受けることに大きな問題はないと見ています。しかし、企業の能力の良し悪しとは別に、「継続的に収益を上げられるか」という問題は別物です。

#1. AIに集まった投資資金は、果たしてニュースケールに向かうのか?

今回アルファベットと契約を結んだカイロス・パワー、この他にサム・アルトマンが投資し、OpenAIが2027年から電力供給を受けると観測されているオクロ(OKLO)、Amazonと開発契約を締結したドミニオン・エナジー...

多くのテック企業は上場の有無を問わず、素早く多様なSMR企業と契約を結んでおり、投資も少なくありません。電力はどれも同じ電力であり、合理的な価格で契約できさえすれば目標を達成できるからです。

このように、原子力発電企業はニュースケールだけではありません。 すでにテック企業はGPU需要によりNVIDIAに巨額を支払った経験があり、これと似たようなコスト構造を作らないよう努力しています。

これに伴い、特定のSMR企業が「第2のNVIDIA」のようなポジションを確立するのは難しいかもしれません。

#2. AIのトリクルダウン効果を受けるニュースケール、リスクも同様

もちろん、誰よりも早く商用化に成功し、市場を先取りしてその効果を享受することも可能でしょう。ただし、SMR企業への投資はAI企業への間接投資であるという点を見過ごしてはなりません。

ウォール・ストリート・ジャーナルは7月1日、「米国内の原子力発電所の約3分の1が、テック企業と電力供給に向けた交渉中である」と報じました。

現在、小型原発は規模の経済を実現できておらず、それに伴い理想的な業績も出ていない状態です。現在の株価は業績よりもコメンタリーに大きく左右されていますが、このコメンタリーはすべてSMRに関連したものです。これはSMR企業、少なくともその株価がAIへの依存度を強めていることを意味します。

#3. 食べ残しは誰が片付けるのか…廃棄物問題

SMRは基本的に、既存の軽水炉(LWR)の縮小版です。したがって、同じ燃料(ウラン)を使用し、軽水炉と同様の方式で稼働するため、廃棄物の発生量も既存の原子炉と大きく変わらない可能性があります。

単に環境の話をしようというのではありません。

一部の国では放射性物質をリサイクルしている場合もありますが、米国では核兵器開発に使用されかねないプルトニウムを抽出できるという懸念から、1977年に使用済み燃料の再処理が禁止されました。現在に至るまで、米国では長期的な廃棄物処分場が承認されていない状態であり、海外へ送ろうにも放射性廃棄物の輸出は大部分が厳格に禁止されています。
これらの廃棄物はただ積み上がっていくだけです。AI企業が電力が不足しているからといって原発を全面的に承認し、その廃棄物によって発生する社会的コストは再び政府が負担するのでしょうか?AIが完全に利他的であり、公共の利益になることを証明できない限り、政治的に周囲の目を気にせざるを得ません。

#4. 最終的なエネルギー供給源は果たしてSMRなのか

廃棄物を考慮してでもSMRが採用される重要な理由の一つは、事態が急を要するからです。
電力インフラはAIの発展速度に全く追いついていません。現在不足している電力を確保するために最も現実的な案がSMRなのです。
つまり、SMRは完全に費用対効果の高い案というわけではなく、状況と妥協した結果だということです。

SMR(Small Modular Reactor、小型モジュール炉)とMSR(Molten Salt Reactor、溶融塩炉)を比較してみると、MSRの方が潜在力が高いと言えます。核融合ほどの理論的効率性ではありませんが、MSRは十分に小型化が可能で、エネルギー効率はSMRより優れており、既存の廃棄物まで一部燃料として使用できるため、廃棄物問題もはるかに軽減されます。ただ問題は、商用化までの予想期間がSMRより長いという点だけです。

理論的に存在する内容は、いつか実現されるものです。ビッグテック企業が当面はSMRを使用すると判断しているから電力供給契約を結んでいるだけであり、もし最終目的地であったなら、こぞってSMR企業を買収していたことでしょう。


投資には常にリスクが伴います。自ら許容できる範囲を理解した状態で実行される投資であってこそ、真の投資と言えるでしょう。
したがって、上記のようなリスクを十分に認識した上でSMR企業に投資することは、良い判断となります。当面、AI企業は電力を必要としており、供給不足が発生し得るというのは十分に論理的な判断だからです。

しかし、AIの発展によって恩恵を受けるという点は、一つの疑問を提起します。AI関連企業に投資できる資金で、あえてエネルギー企業に投資する理由は何でしょうか?
1)株価が低くて魅力的だから、2)エネルギーセクターに投資することで特定の何かに対してヘッジ効果を得られるから、あるいは3)AI企業の発展以上のポテンシャルが予想されるから、でしょう。

少なくともSMR企業について言えば、筆者は1番目の理由でなければあまり納得できません。コツコツと積み立てるように買い集めるには、必要以上のリスクが存在するように思われます。

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