2023年01月25日
大手企業はリストラを進めると言っていたのに、なぜ失業率は底水準なのか?
ペ・ソンウ
飲食店やカフェからニュースや各種オンラインメディアまで、景気後退を懸念する声が聞こえ続けています。
企業家たちも景気後退を懸念しています。Google、Microsoft、Amazon、Meta...
誰もが知る大手企業もリストラのニュースを相次いで伝え、まるで彼らも不況に備えているかのような姿勢を見せています。
しかし、雇用に関する全般的なデータはまちまちな様相を呈しています。
3.5%という失業率、1960年代以降で最低水準を記録した米国の失業率が、これを如実に物語っています。
「2023年1月のNABE企業環境調査は、今年の景気後退に対する懸念が広がっていることを示しています。」
- ジュリア・コロナド、NABE会長
NABE(全米企業エコノミスト協会)の2023年1月の企業環境調査報告書では、
2020年以降初めて、「今後、会社の雇用が増加するより減少するだろう」と答えた回答者が上回り、過半数が景気後退を予想していることが示されました。
これは2022年末とは全く異なる様相です。
2022年10月から12月までは、NABEの調査回答者が属する企業の大多数で賃金が上昇し、人員も追加されていたからです。
確かに少し前まではニュースでリストラの話が出ており、実際に多くの企業が利益率の減少を報告していましたが、
一体この雇用はどこから生まれているのでしょうか?
1960年代以降で最低値を記録した米国の失業率、押さえておくべきポイントでは、レジャー・ホスピタリティ業種の雇用と離職、そしてこれを給与上昇に関連付けて説明しました。
今回はもう少し詳しく見ていきましょう。
業種別に分けて失業率を比較してみると、前年比で大幅に減少し、特に目立つ業種が見えてきます。
石炭、原油および天然ガス鉱業(Mining, quarrying, and oil and gas extraction) -3.90%
情報サービス業(Information) -2.50%
レジャーおよびホスピタリティ(Leisure and hospitality) -1.30%
ここで鉱業と情報サービス業の場合、レジャー・ホスピタリティと失業者数に8倍以上の差があるため、
まず失業率が増加した業種を除外し、2022年12月の前年比失業者数の減少規模を示すと次のようになります。
これで全体の失業率を押し下げた業種が絞り込まれました。
レジャーおよびホスピタリティ(失業者 前年比167,000人減)
製造業(失業者 前年比164,000人減)
卸売・小売業(失業者 前年比155,000人減)
これら3つの業種が1年間で全体の失業率減少に寄与した割合は、実に57%に達します。
世界に名を馳せる大企業が従業員を解雇している状況下で、これらの業種はどのような資金で従業員を雇用しているのでしょうか?
データを見ると、企業が従業員を解雇してから再雇用したのではなく、転職のために退職した人々が新たな職に就いたという結論に至ります。
求人サイトIndeedによると、業種別の離職率は賃金水準が低いほど高くなっています。
実際、レジャー・ホスピタリティ、製造業、および小売業の賃金は、時間当たりおよび週当たりの賃金のいずれも全業種の平均より低く、中央値をも下回る数値を示しています。
ここから、賃金が大幅に上昇したことで労働者が職を見つけたという仮定を立てることができます。
実際、2021年12月時点で最も失業率が高かった業種は、
石炭・原油・天然ガス鉱業、建設業、卸売・小売業、情報サービス業、レジャー・ホスピタリティであり、
2022年12月におけるこれらの前年比賃金上昇率は、時間当たりおよび週当たりの平均に基づくと、
石炭・原油・天然ガス鉱業が6.3%、建設業が4.9%、卸売業が3.9%、小売業が1.9%、情報サービス業が5.6%、レジャー・ホスピタリティが4.8%上昇し、
卸売・小売を除き、その他の業種を除いた賃金上昇率の平均値である4.1%を大きく上回る結果となりました。
もちろん、賃金が低く、賃金上昇率が高いという理由だけでは説明がつきません。
しかし、失業手当の申請件数が失業率よりもはるかに早く減少した最近の推移まで考慮すれば、納得がいきます。
「失業手当」は、最低賃金を受け取っていた労働者が本人の意思とは無関係な要因で解雇された場合に請求が可能です。
2021年12月は22万7,000件、2022年12月は20万6,000件と、大きな差は見られませんでした。
そして「失業者」とは、入社志望を出すなどの求職活動を行っているものの、現在職がない人々を指します。
ここで、8月まで続いていた人手不足を考慮すると、辻褄が合う部分が出てきます。
これらを想像してみると、入社選考に落ち続け、憂鬱な就職難に直面している失業者を思い浮かべるかもしれませんが、
賃金アップを狙い、本人の実力以上の企業を目標に応募する志願者たちも、いずれにせよ「入社志望」を出している失業者であると考えることができます。
失業手当はそのままで、失業率だけが低下します。
会社から「解雇された」のではなく、転職のために「辞めた」失業者が一時的に多かったのですが、福利厚生を拡充する企業が増えるにつれて、自分の居場所を見つけていったのです。
人手不足が深刻だった時期、様々な企業が学歴制限を撤廃し、パートタイム従業員にも福利厚生を提供するなど、賃上げとともに求人のための条件を提示する姿が頻繁に見られました。
ウォルマートの場合も、当時転職せずに働いている従業員にボーナスを支給することにしていました。
企業側には転職者に対する懸念があり、より良い条件を求めて応募してくるこれらの求職者を奪われれば、採用の機会が大幅に減少する時期だったという意味です。
続いて、米国では失業率を6つのタイプに分類しています。
U-1からU-6に行くにつれて、失業率の基準範囲は広くなります。
- U-1:15週間以上の失業者
- U-2:U-1 + 臨時雇用を終えた者
- U-3:全失業者(公式失業率)
- U-4:U-3 + 失望労働者(Discouraged workers)
- U-5:U-4 + 労働力人口に含まれるその他の労働者
- U-6:U-5 + 非自発的パートタイム労働者
*失望労働者(Discouraged workers):過去12ヶ月間に求職活動をしたことがあるが、就職の見込みがないと判断し、過去4週間は求職活動をしていない労働者
*非自発的パートタイム労働者:フルタイムでの勤務を希望し、勤務可能であるものの、経済状況など何らかの理由でパートタイムとして働いている労働者
コロナパンデミックが始まった頃からのデータをチャートにすると、次のような資料を確認できます。
当然ながら基準範囲が広がるだけで、すべて同じ失業率であるため流れは似ていますが、それぞれのデータを比較すると興味深い事実を知ることができます。
U-2がU-1 + 臨時職を完了した者、
U-4はU-3 + Discouraged workers、
U-6はU-5 + 非自発的パートタイム労働者であることを利用すれば、
臨時職を完了した者、Discouraged workers、そして非自発的パートタイム労働者だけを抽出することができます。
- U2 - U1 = 臨時職を終えたばかりの失業者
- U4 - U3 = 以前に求職活動をしたことはあるが、過去4週間求職活動をしていない失業者
- U6 - U5 = 非自発的パートタイム労働者
2022年を通じて、これらの指標は似たような動きを見せていました。
特に企業内に臨時職が多いわけでも、企業の状況が悪くてパートタイムばかり採用しているわけでもなく、
かといって、失業者が求職活動をしていないわけでもありませんでした。
データ上では失業者ですが、事実上は転職者である彼らが、満足できる賃金を求めて入社したに過ぎません。
これでフローチャートが頭の中に描かれ始めます。
大企業がリストラを進める中でも雇用市場が堅調なのではなく、
高い賃金を求めていた人々が、今ようやく満足して入社し始めたタイミングで、
従業員が多く景気に敏感な大企業のリストラが、今まさに始まったのかもしれません。
雇用市場のデータだけを見れば、投資家の懸念が杞憂に終わるほど、正常な軌道に乗った様子です。
しかし、このデータの順序をどう捉えるかによって、解釈は大きく異なる可能性があります。
もちろん、雇用市場のデータが非常に良好であることは事実であるため、アップサイドリスクも存在する状況だと考えられます。
CPIが落ち着きを取り戻し、金利がこれ以上上昇せず、サプライチェーンも無事に解消されれば、現在の雇用市場データはこれ以上ないほど好材料として作用するでしょう。
高い賃金を求めて定着した転職者たちによって、インフレが再び上昇しないことを祈るばかりです。
*アップサイドリスク:状況が好転する可能性があり、株式を保有していないことで逃してしまう期待収益に対するリスク
3行まとめ:
1. 雇用指標が良好なのは、人手不足を経て転職者たちが新たな職場に定着したため
2. リストラが進行中であるにもかかわらず雇用指標が良いのではなく、雇用指標が良い状況下でリストラが始まった可能性もある
3. アップサイドリスクも存在する状況であり、転職者に起因するインフレも念頭に置くべき
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