2024年02月18日
不動産株で78%の利益を出す方法
ソン・リュンス
アジア経済の2月18日付記事「5大金融、海外不動産投資で1兆ウォン損失」 を読むと、「顧客に販売した海外不動産ファンドなどとは別に、金融グループが独自に執行した投資で、元本総額は20兆3868億ウォンである」という一節が出てくる。
この言葉は、金融機関の代替投資担当者たちが無策(?)に買い入れた海外不動産資産の大部分は、ファンドやREIT(Real Estate Investment Trust;不動産投資信託)の形を通じて、私たちのような一般人や私たちの老後を支える国民年金に販売されたということだ。北米や欧州の商業用ビル(主にオフィス)が史上最高値を記録していた時期に、韓国の金融機関が互いにより高い価格を提示し(どうせ国民年金が買ってくれるだろうと?)入札競争を繰り広げたことについて批判の余地はかなりあると思うが、最近私が感受性がなく批判的すぎると攻撃を受けているため、これくらいにしておく。
「5大金融グループはこのうち、融資債権を除き、収益証券やファンドなど512件の投資に計10兆4446億ウォンの元本を投入した」というが、分かりやすく説明すると、エクイティ(持分)投資の比率が約半分だったという意味だ。エクイティは株式、債券は融資と考えれば理解しやすい。融資は比較的元本損失が起きる確率が低いが、エクイティは不動産価値が下落すれば無条件に損失が発生する。これは、資産に対する権利の側面で債権者が優先されるためだ。
記事によると、5大金融グループの全体評価収益率は-10.53%で、計1兆ウォンほどの損失が出たという。もちろんこれは現在まで確定した規模であり、ファンドの満期が近づき評価替えを行ったり実際に売却したりする場合には、さらに大きな損失を被る確率が高いと考える。
不動産株で利益を出した話をするのにこの記事から引用した理由は、きちんとした分析なしに投資すれば、不動産も非常に危険な投資対象になり得るという話をしたかったからだ。イーデイリーの記事「一日で20%から-50%に…信じられない海外不動産公募ファンド」で扱われた未来アセットマップスREITs商品が代表的な例である。
では、AWポートフォリオに計78%(配当込み)の収益率をもたらした企業は何で、なぜ同じ商業用不動産資産でありながら良い成果を見せたのだろうか?その秘訣は、私募市場と公募市場の裁定取引(arbitrage)にある。
その企業は、米国ニューヨーク証券取引所に上場しているSL Green Realty(ティッカー:SLG)というREITだ。金融機関が2010年代後半に集中的に投資したのと全く同じオフィスビルをポートフォリオとして保有している企業であり、組入時点は2023年6月21日、除外時点は2024年2月14日である。
SLGの過去1年間の株価推移だが、まず3月に急激に株価が下落したことが分かる。振り返ってみると、昨年3月はSVB(シリコンバレー銀行)が破綻し、米国の地銀に対する懸念が極度に高まっていた時期だった。地銀は商業用不動産に対する融資債権の規模が大きかったが、市場金利とオフィス空室率が同時に上昇し資産価値が減少し、結局それらの銀行も打撃を受けるだろうという懸念が蔓延していた。主要地銀やオフィスビル中心の商業用不動産ポートフォリオを保有するSLGもまた、その時点を境に株価が暴落した。
ここで裁定取引(arbitrage)の機会を発見するのだが、投資家たちが極限の恐怖に包まれたあまり、質の高いビルを保有するSLGさえも無差別に売り浴びせる姿を見せたからだ。
オフィスだからといって皆同じではない
2023年第1四半期基準でニューヨーク市のオフィス空室率は22.2%と、歴史的に高い水準を維持していた。同時点のSL Green Realtyが保有するオフィスの統合賃貸率は90%で、空室率は10%程度にしかならなかった。会社が保有する資産はA級、業界でよく言う「プライム」級だったからだ。
本文の最初の写真に出ている建物はワン・ヴァンダービルト(One Vanderbilt)で、ニューヨーク市で最も賃料が高い建物であり、SL Green Realtyが保有している資産だ。この資産は新しい建物であり、マンハッタンの一等地に位置しているのはもちろん、ミシュラン3つ星レストランなどの高級コンテンツを保有しており、LEED認証など環境にも配慮されている。このような「プライム」級の建物に対する需要は、主にバルジ・ブラケット(Bulge Bracket)投資銀行、有名法律事務所、ビッグテックなどの優良企業から来るが、彼らは人材を誘致するための戦略の一つとして、一等地の最高級アメニティを備えたオフィスを利用する。こうした企業は相対的に景気後退に鈍感で、良いオフィスに対する支払い意思が高いため、他のB級オフィスの賃料が安くなっても簡単には「ダウングレード」しない。これがSLGの統合賃貸率が90%と善戦できた秘訣だ。
当時私は、SLGのオフィスポートフォリオが一般的なニューヨークのオフィスビルで構成された韓国の公募ファンドより優れていると考え、急激な株価下落により会社が持っている資産の価値を正しく反映できないミスプライシング(mispricing)現象が発生したと判断した。SLGのプライム級オフィスビルが高値対比5~10%ほど下落した価値と認められる可能性がある一方、他のB級オフィスビルの取引価格が30%ほど下落したため、SLGもまた同じ線上で比較されている状況である確率が高かった。
そこで4~5月に株価が底を打つのを確認して6月21日にポートフォリオへの組み入れを掲示し、6月26日にSLGが保有するビルの一つが20億ドルと評価され(高値対比7%ほど下落した水準)、日本の森トラストの持分投資を誘致したことで、株価は上昇傾向に入り始めた。
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